驚異の部屋とは?

ピーテル・パウル・ルーベンス《視覚の寓意》1617年

「驚異の部屋」とは、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパの上流階級の間で流行した蒐集趣味です。「驚異の部屋」には、絵画をはじめ、動物の剥製、科学や数学の道具、聖遺物など世界のあらゆるモノが陳列されていました。ルーベンスが描いた《視覚の寓意》には「驚異の部屋」そのものが描かれています。つまり、モノの蒐集・陳列という視覚が驚異のアレゴリー(寓意)をあらわしているのです。


アレゴリーとは?

サンドロ・ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》1487年

絵画作品を鑑賞するとき、私たちはこの作品がどんな場面を描いているのか、中央にいる女性は誰なのか、と思いを巡らせることでしょう。当時の画家たちは、市民の識字率が低かったために、宗教や神話の主題をわかりやすく伝えるため、絵の中にシンボルを描き込んでいました。貝の上の裸婦、薔薇の吹雪、裸婦への祝福。これらのシンボルを総合することで本作が神話「ヴィーナスの誕生」に基づいて描かれた絵画であると読み解けるのです。

参考文献

<驚異の部屋>

・パトリック・モリエス『奇想の陳列部屋』市川恵里(訳),河出書房新社,2012年.
・小宮正安『愉悦の蒐集ヴンダーカンマーの謎』集英社新書ヴィジュアル版,2007年.
・西野嘉章『インターメディアテク:東京大学学術標本コレクション』平凡社,2013年.
・西野嘉章『ミクロコスモグラフィア:マーク・ダイオンの驚異の部屋 講義録』平凡社,2004年.

<シンボル>

・ゲルト・ハインツ=モーア『西洋シンボル事典:キリスト教美術の記号とイメージ』
野村太郎,小林頼子 (訳),八坂書房,2003年.
・岡田温司『「聖書」と「神話」の象徴図鑑:オールカラー』ナツメ社,2011年.
・船本弘毅『一冊でわかる名画と聖書』成美堂出版,2011年.
・佐藤晃子『アイテムで読み解く西洋名画』山川出版社,2013年.